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Updated 2021.02.20

《魚津水族館 》学芸員 | 不破 光大(ふわ みつひろ)


子どもたちに届け、自然はこんなにも面白い!


#とんぼ大好き #ヤゴの変態  #魚津水族館学芸員

子どもたちに届け、自然はこんなにも面白い!

Profile|Mitsuhiro Fuwa

2005年に魚津水族館の飼育員として就職、2013年に学芸員となる。主に陸域生物(川、沼など陸地の水辺の生き物)の調査・研究を行う一方、屋外活動などを通じて、地域の子ども達に生き物について解説する役割も担う。プライベートでは3人兄弟のお父さん。犬、カメ、トカゲなどを飼っている根っからの生き物好き。

不破さんが学芸員として勤める魚津水族館は日本で現存する最古の水族館。正面に富山湾、背後には立山連邦が。

ただの生き物好きから水族館学芸員へ

魚津水族館に入るとすぐ左手に「トンボ変態コーナー」が目に入る。
(“変態”とは生物が幼体から成体に変化することを指す。あのヘンタイではない。)
この展示は「トンボ大好き学芸員、不破さん」のコーナーだ。
今でこそたくさんの人たちに生き物の楽しさを伝える学芸員だが、もともとは「ただの生き物好き」だったのだそう。

魚津水族館に入るとすぐ左手に現れる「トンボ変態コーナー」は「トンボ大好き学芸員、不破さん」の担当。

富山県の東端、朝日町宮崎地区で生まれ育った不破さん。家を出れば海や山がすぐそばにあり、どこもかしこも遊び場だった。

「港や神社などへ行くと、どこにでも近所のお兄ちゃんたちがいて、蛇の捕まえ方や、魚やサザエの取り方を教えてくれました。時にはこっそり捨て犬を育てたり。僕は、そういう環境に育って、生き物好きな先輩が身近にいたことが幸運だったのだと思っています。」

こうした日常の中で、どんどん生き物に惹かれていった。
だからと言って最初から水族館で働くことを目指したわけではない。

トンボに出会う前は「富山県の河川エリア」淡水魚の担当だった。海域より陸域(陸地の水棲生物)が好きとのこと。

「僕はただ生き物が好きだったんです。そして生き物を好きな人と話すのが好きだったんですよ。もちろん魚も好きで、いつかペットショップなどを開いてお客さんたちとワイワイしたいな〜という、ホンワカした将来像しかなかったんです(笑)。算数が苦手で大学も文系に進みました。水族館のような理系の仕事はまず無理だと思っていましたから。」

そんな不破さんが飼育員として魚津水族館に就職したのは2005年のこと。大学卒業後にしばらく同館のアルバイトをしていた縁で、魚津水族館の稲村修館長から声をかけられてのことだ。調査の仕方や記録の重要性、研究のノウハウなど、すべては現場に入って一から稲村館長より教えてもらった。
それから8年、ただの生き物好きだった不破さんは、魚津水族館の学芸員となった。

生き物が大好きだという不破さん。姿を見て寄って行くお魚たちも、心なしか嬉しそうに見えるような、気のせいのような…。

不破さん、トンボと出会う

「水族館の野外活動の時、ヤゴを採ってきた小学生からの『これなんのトンボ〜?』って質問に対して説明できなかったんですよ。『何トンボだろ〜?』と答えたら、『水族館の人のくせに知らないのかよ…』って顔をされて。悔しくて(笑)。
じゃあちょっと持って帰って育ててみよう、と思ったんです。」

それが不破さんとトンボとの運命の出会いとなった。この時までの水族館での主な担当は淡水魚で、ヤゴやトンボは興味の対象外だった。

「そのヤゴは図鑑で調べてコオニヤンマだと知っていたんですけど、実際に出てきたのを見たら素晴らしいトンボで!そこにすごく心を打たれたんです。
これ、水族館でヤゴとトンボをセットで見せたら、きっとみんな面白がるだろうな、と思ったのがトンボ調査のきっかけです。」

トンボが主役になりがちだが、水辺に生きる「ヤゴ」に注目して展示するのは水族館ならではの視点。

休日にはトンボやヤゴを探しに県内あちこちへ出かける日々が始まった。虫を研究している外部の学芸員たちと情報交換をしたり、持ち寄った標本の改善点を指摘してもらい、自身も少しづつ成長しながら夢中で調査を進めて行った。

そして調査スタートから7年目の2020年、魚津水族館には新たにトンボ展示のコーナーが加わった。現在、富山県には89種のトンボが確認されているが、そのうちの61種が展示されている。トンボとヤゴのセット標本は、種類別に透明なアクリルケースで壁面ディスプレイされ、各個体を上からも横からも眺めることができる。昆虫標本としてはあまり見慣れない展示風景だ。

「上からじゃなく横から見るポイントもあるのでそういのをちゃんと見せたいし、なるべくインパクトのある展示にして、少しでも興味を持って貰いたいと思い、この展示スタイルにしました。」

見せ方ひとつにも、トンボとヤゴを知り尽くす不破さんならではのこだわりが感じられる。
虫仲間とは “この展示から一人でもトンボ好きが生まれたらいいね” と話しているそうだ。

コーナーでは本物のヤゴも観察出来る。オニヤンマのヤゴは約4年間水中で暮らす。写真はオニヤンマが脱皮した直後。

トランスフォーム(=“変態”)に魅せられて

トンボは昔から童謡で唄われたり、着物の柄になるなど、身近で受け入れられやすい昆虫だ。
ところが、不破さん本人はトンボより、幼虫のヤゴに惹かれているという。

「僕の好きなのはヤゴの “変態” です。羽化とも言います。僕にとってはそこが惹かれるポイントで、トンボになってしまった成虫にはあまり興味がないんです。とにかく変わる瞬間が好きで。“トランスフォーマー(映画)”って好きじゃないですか? あれの延長みたいなもので、姿がワッと変わるのが男心に響くというか、あれが一番衝撃だったんです。
だから映像を撮って、その瞬間を残すのが面白くて。それを観せるとみんな単純に感動するんですよ、スゴイ!って。」

41種もの変態(羽化)の様子をタイムラプスで紹介。学校授業で昆虫を習う小学生にはぜひ観てほしい。

変態にかかる時間は40分ほどのものから大きなギンヤンマなどは3時間にもなる。そして、例えばオニヤンマであれば5cmほどのヤゴから10cmほどのトンボへと大きく姿を変える。
そういえばあの小さなヤゴにどうやってトンボの長さが収納されているのだろう?

「水中に棲むヤゴは、水をたくさん体に含んで羽化のために水中から上がってきます。その後、ちょっとずつ体内にある水分を体の節に押し込んで押し込んで伸ばし、そしてトンボの胴はあの長さまでになるんです。
昆虫はみんな “変態” するところがすごい!。さらにトンボは住処が変わることも面白い昆虫です。水中にいたのが空を飛ぶようになるんですから!」

撮影した41種にもなる“変態”の様子は、「トンボ変態コーナー」の大型モニターで、タイムラプス動画を観ることが出来る。
また2020年、コロナ禍で閉館中に行ったネットを利用したインスタライブでは、不破さんのトンボ愛あふれる解説付きの配信に、多くの反応があり評判も上々だった。今後は地元の小学校などで生物の授業教材として提案出来ないかと考えているとのことだ。

人と自然の間をつなぐ魚津水族館

魚津水族館は比較的小さい規模ながら、日本で一番長い歴史を持つ水族館としても知られている。都会の大型水族館のようなインパクトのある展示は無いものの、富山特有の生態系や身近な生き物たちを中心に丁寧に紹介している。スタッフによるポップな手描きイラストを使ったの解説パネルは、温かみがあり生き物たちへの興味が湧いてくる。訪れる“水族館好き”の人たちからは「丁寧な解説は内容が濃い」、「お魚に対する愛情を感じる」など反応も良いようだ。

「魚津水族館は、自然への入り口だと考えています。例えば「タニシ」のなかにも、オオタニシもいればマルタニシやヒメタニシもいてそれぞれすみかが違う、そのことに展示で気付いたら、外にいくとやっぱり誰でも気になって見てしまいます。
そういうことに一つでも気付いてもらえたら、みんな外に行くのが楽しくなるんです。本物じゃないとやっぱりわからないことが沢山あります。“ 動物の森(ゲーム)” ではわかんないんですよ(笑)」

イラストを使ったパネル解説が小さい子どもたちにも分かりやすく大好評。大水槽を上から覗けるバックヤードも人気!

自然への入り口、それが魚津水族館の役割りだと話す。
不破さんは、『富山県のフィールドを使って自然を伝える』という課題の中で、“ 僕はなにが出来るか?” ということを常に考えている。

「特に、子どもたちに自然の楽しさを教えてあげたいんです。僕たちも、楽しいから自然の中に行くんです。子どもたちに、もっと外の楽しさを教えてあげれば、故郷の思い出が楽しいものになるでしょう? そうしたら、大人になって地元を離れても、ふるさと自慢ができるじゃあないですか。」

ありきたりで身近な生き物たちをどんなふうに展示して、どう面白く見せるか。その素晴らしさをもっともっと多くの人に伝えていきたい、と話す。

「そういうことしてると、暇な日がないんですよ(笑)。
魚津は何もないとよく言われますが、そこらじゅうになんでもあるのに、もったいない。
何もないってことはないですね。何に興味をもつか、というだけです。」

自身も存分に楽しみながら、不破さんの生き物への探究はこれからもずっと続いていく。

 
不破さんの知恵袋

魚津のビオトープ「別又自然観察池」

休耕田を利用したビオトープ。ここでは、なるべく自然の変化にまかせ、どのような動物や植物が姿を見せるかを時間をかけて観察している。一年中干上がらない水場を作ったことで、数年かけて生物間での食物連鎖の関係が出来上がり、沢山の両生類や昆虫たちが移動してきた。ここはトンボにも人気のようで、33種ものトンボが確認されている。中にはレッドデータブックに載っている希少種も。自由に訪れても良いので、ぜひ自然観察へ出かけよう。ただし、出来れば生き物はキャッチ&リリースで。

「記録」すると世界が広がる!

“ 記録する 、データを取る ”ことは研究者じゃなくても重要で、時間が経つほどに役に立つ。いつ、どこに、何がいたか、大きさはどうだったか。そんな簡単なメモでもいい。例えば去年釣った魚の写真が一つでもあれば、今年の同じ魚と比較することが出来る。以前との違いに気付いたら、そこから「なぜ?」が広がる。
ちゃんと記録しているとか、写真や標本を持っているとか、そういうもので信憑性がまったく違ってくるのだ。難しくなくても良いから、記録から生まれる気付きを楽しもう!

生き物と人の関わり方

メダカを増やす活動でのこと。池のメダカがヤゴに食べられるという事件が発生した。駆除という簡単な方法を選択する前にちょっと待って!
「トンボも一緒に暮らす仲間です。ここでヤゴに食べられるメダカは野生でも生きて行けません。生き抜くメダカを育てましょう。そうすると、強い種が生き抜いていきます。だからそのままでいいんです。」
人の好意は時に自然のバランスを崩す行為だということを肝に免じたい。(写真は“まちこ”)

魚津水族館

場所 富山県魚津市三ケ1390
TEL/FAX TEL 0765-24-4100 
FAX 0765-24-4128
about 魚津水族館は、日本で現存する水族館の中で最も長い歴史があり、初代は大正2年に創立され、現在は3代目の水族館。「北アルプスの渓流から日本海の深海まで」「富山湾を科学する」を基本テーマに、富山県・富山湾の水生生物を中心に展示を行っている。
今でこそ全国の水族館で見られるアクリル製トンネルだが、日本で初めて設置したのは魚津水族館である。
Web/SNS http://www.uozu-aquarium.jp


YouTubeチャンネル「魚津水族館公式チャンネル」

不破さんの話を聞いていると、どんどん引き込まれ、どんどん素朴な質問が湧いてくるので困った(笑)。何しろ不破さんの生き物に対する興味と愛情は、羨ましいと思うほどに真っ直ぐなのだ。きっと、同じ自然を見ても、不破さんから見えている景色は5KのTV画面のように鮮やかで、情報量が多いに違いない。
とりあえず、今年の夏は私もトンボが気になる存在になりそうだ。

取材・ライター 舘 香都佐 (スタジヲ×4466、webデザイナー)
撮影      鬼塚 仁奈(tete studio works)
取材日     2020.11

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